彼の就職活動で印象的だったこと、1点目は「意志の強さ」です。
「製薬メーカー開発職」を志した大きなきっかけは「実務実習」でがん患者の少年と出会ったことです。Aさんの軸には必ず「がんを治す」という想いがありました。
ガクチカも「研究活動」でしたが、これは就活のために作成したものではありません。本当に、ガチで、力を入れて取り組んだことでした。学会発表や論文として形に残すことに強いこだわりを持っていました。
就活用に学会発表というゴールを設定する学生に度々出会いますが、彼は違いました。「研究結果を出し、それが世の中に出なければ患者さんに届かない」という考えからくるものだったのです。この軸の強さは持ち味のひとつであり、最大の武器でした。
Aさんの就活を振り返って印象的だったこと、2点目が「とにかく攻める」ということです。
本人も振り返って「ハイリスクハイリターンな就活」をしたと言っています。なぜ私が攻めてると感じたかというと、とにかく多業界のインターンに挑戦していたからです。製薬メーカー(MR・開発)・診断薬・CRO・病院薬剤師・ベンチャー (webコンサルティング)と幅広く挑戦していました。
きっかけは5年生の夏に、製薬のインターン選考で落ちてしまったことでした。複数業界に広げて抱えきれないと悩む就活生に多く出会いますが、Aさんは逆に「業界を絞らなかったことで、自分自身の希望がより明確になった」と言います。
また就活イベントには1人で足を運び、他学部の学生と話すことで製薬業界を客観的に見たり、文系の学生から議論の仕方や発想力を学んだと言います。この行動力もとても印象的で、個別面談でその経験を聞くのが楽しみになるほどでした。
実はAさんはもともと人前に立つことが得意ではなく、「安定志向」だったと言います。研究活動や就職活動で攻めまくったキャラクターとはかなり違う印象です。
Aさんも、臨床開発職の倍率の高さやインターンで優秀な人と出会う中で、自分が内定をもらえるのか不安を抱えていたそうです。「新薬開発の成功確率は30000分の1。就活の倍率でビビってたら、開発なんてできない!」と思い込み、行動を続けました。成功体験だけでなく多くの失敗も重ねたからこそ常に成長を感じることができ、本選考には自信を持って挑むことができたと振り返ります。
そして「自分が失敗した」と思っても、挑戦する姿勢を評価してもらえることも多かったそうです。これは勇気を与えてくれる体験談だと思います。
最後に、Aさんに「実家を継がないのか」と再度訪ねてみました。まだ新薬開発を成し遂げていないしやりたいことが沢山ある!と力強い言葉が返ってきました。就職後も軸は変わらず、チャレンジ精神を発揮して先輩方を唸らせているようです。
(2020年10月)