これまで大勢の就活生と出会ってきましたが、その中でもKさんは「ものすごくしっかりした学生」という印象でした。
私は、就職活動において大きく2つの力が重要であると考えています。
ひとつは、これまでの人生とこれからの人生をしっかりと「考える力」。もうひとつは、考えたことを相手に「伝える力」です。(さらに細分化すると、情報収集力やチャレンジ精神も求められますが…)
この大きな2つの力のうち、Kさんは特に「考える力」に長けています。
大きなノートにびっしりと書かれた自己分析。情報を集め、それらについて書きながら丁寧に考えを深めていくことで、落ち着いて自分の考えを述べることができる力を身に付けていました。
Kさんは研究室やアルバイト先において、目上の人からさまざまなことを頼まれる存在でした。面談のたびにしっかりとノート開くKさんの姿を見て、頼りたくなる気持ちも分かるなあと感じていました。そんなしっかり者のKさんだったので「就活もすぐに終わるだろう」と安心して見ていました。
MRを目指し就職活動を進めていたKさん。
私から見たKさんは自分から積極的に何かを働きかける、というよりはさまざまな情報や意見を集め、それらをもとに必要なことを考えながら、慎重に行動を重ねていくタイプでした。
これまで関わってきたMR希望の学生たちとは少し違う印象でしたが、私はKさんの挑戦を応援していました。
MRを目指し十数社の企業の選考に挑みましたが、思うような結果を得ることができませんでした。6年の6月になり結果が思わしくない場合、企業就活を諦めて、他の業界に進路変更をすることが多い印象です。しかしKさんはこの時期から再度企業へのエントリーを増やします。
この時、改めて自分の気持ちから逃げずに向き合ったKさんの選択は、開発系の職種に挑戦するということでした。各種ナビサイトから、エントリー可能なCRO・製薬メーカーを探し、就活を続けたのです。
就活終了後にKさんから聞いた言葉です。
実は大学の先輩や研究室の先生から、営業ではなく開発職が向いているのではないか、と言われていたといいます。
彼が力を入れて取り組んでいた研究の内容やそこで身に付けた能力にも、開発系の仕事で活かせることが多くありました。それでもKさんは採用数の少なさから受かる自信がなく、挑戦をしなかったと言います。
しかし、6月以降にエントリーした企業のうちCRO・製薬メーカーの両方から内定を得ることができました。この時期に選考をしている企業は、例えば内定辞退枠の補充や、2次募集・3次募集と採用数は少なくなっていきます。そのような厳しい選考の中でも就職先を決めることができました。
さまざまな葛藤を乗り越え、一歩踏み出す勇気がこのような結果に繋がりました。このようなKさんの就職活動は、職種選択に迷うみなさんにヒントや勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
(2020年12月)