新人薬剤師が見つけてきました!
薬剤師のためのイケてる仕事術
Health Hacks for Pharmacist

 今年の春に薬局薬剤師としてデビューした1年目の薬剤師が、同世代の薬剤師の活躍ぶりや、関心を持てそうなトピックを見つけてリポートしていきます。

地域で薬剤師が活躍できるコミュニティってどんなものだろう?

 「地域包括」や「かかりつけ薬局」とはよく言われますが、理想とされるコミュニティ像は、地域の生活者のニーズによって様々です。みんなが気軽に訪れやすい ”地域のハブ” として存在することでしょうか。患者様の最期まで寄り添わせていただけるような、人として密接な関係を築くことでしょうか? その概念は、制度や人口構成、医療経済とともに移り変わってゆくフレキシブルなものです。超高齢化社会に直面している今、大きな変化が求められていることは医療従事者でなくとも知られていることですね。

 「もしかしたら、薬剤師という職種がこれから大きく変わっていく瞬間に、自分がいられるのではないか」、そのようなワクワクした気持ちで薬剤師を目指した新卒2年目の草柳有沙(くさやなぎありさ)さん。薬剤師を目指したきっかけや、これからの薬局が作っていくコミュニティの一つの形について、お話ししてくださいました。

草柳有沙さん。'17年東京薬科大学卒業。千葉県・銚子市の調剤薬局に勤務。

自己紹介をお願いします

草柳さん:東京薬科大卒の草柳です。神奈川県出身で、現在は千葉県の銚子市にある、1日約200枚の処方箋をお受けしている調剤薬局の薬剤師をしています。

薬剤師を目指すきっかけになった「パッチ・アダムス」

草柳さん:Patch Adams(パッチ・アダムス)というアメリカの実在する医師をモデルに、彼の医学生時代を描いた映画「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」をご存知でしょうか? 彼は「医療は病気を治すものというよりも人を幸せにするもの」と捉えていて、愛とユーモアを根底においた医療を行い、臨床道化師としての治療も行っています。その考え方に中学生の頃に共感して、私も彼のような医療で人を幸せにしたいと思ったのがきっかけです。

 母が薬剤師をしていたのですが、その頃はただお薬を調合するだけが薬剤師の仕事でした。でも今はそれだけが薬剤師の仕事じゃないっていうのはもはや当たり前の認識ですよね。これから薬剤師という職業が大きく変わっていく瞬間に自分が立ち会えることや、その一翼を担えることにワクワクしています。

薬剤師という専門性だけでは患者様の疑問や不安を解消できない。解決の糸口は「地域資源」

草柳さん:地域包括支援センターや地域コミュニティで働かれている方々のことを指して「地域資源」といいます。例えば地域活性化活動している人とか、コミュニティスペースを運営している人とかです。

 お薬を飲んでもらうことで痛みを取ることはできますが、患者様が本当に困っていることは薬では解決できなかったりします。例えば、痛みで買い物に行けないとか、家族に会いに行きたいけれど体がうまく動かなくて外に出られないとか、そういうことかもしれないにもかかわらず、私たち薬剤師はそこを解決することができません。

 そこで、介護職や配食サービスの方と連携して一人の患者様の生活をお手伝いさせていただくことで、医療を土台として患者様の生活を豊かにできるのではないか、と考えています。

すでにコミュニティ化している空間を活用する

草柳さん:そういった連携をするのにカギになるのが、地域資源である方々が携わっている、地域包括支援センターや地域コミュニティだと考えています。地域包括支援センターとは、市が運営している公的な機関で、例えば介護や生活習慣病のような、暮らしの生活全般をサポートする機関です。介護士や保健師さんがいて保健指導ができたりします。

 現在、薬局として地域包括支援センターと連携を取ろうとしているのが「認知症と診断される前の人」のサポートです。患者さんご自身が気づいていなくても周辺の住人の皆様は「おかしいな」と感じていたりします。そういう地域の情報を地域包括支援センターで収集し、気になる人がいたら同センターの方や私たち薬剤師が訪問し、患者さんに病院に行くように促します。そういったサポートは薬局だけではなかなか難しいので、地域で協力してサポートさせていただけたらと考えています。

 一方、私たちが目指している地域コミュニティとは、既にコミュニティ化している空間、例えば地元の人達が集まる喫茶店だったり道の駅だったりを、よりコミュニケーションの場所として活性化させて、利用してもらうことです。

 道の駅を例にすると、地産地消の食材を売っている市場の隣に食事ができるスペースがあって、暖かい店員さんたちが「おかえり」という雰囲気で迎え入れてくれる。そしてそこで地元の食材を使った健康的なご飯を食べられる。そこにいる人たちは、地域が好きで人が好き。だから人が集まってくる。

 こういうコミュニティ化している既存の空間こそ、実は「医療を身近にできる場所」なんじゃないかと思っています。

 医療って割と日常とかけ離れていると思っていて、病院とか薬局って何かがないと行かないじゃないですか。生活の延長線上にないというか。もっと人の生活に沿った気軽にアクセスできるところを活用する方が、患者様も自然と生活の中に医療があるように感じるようになるのではないかと考えています。

 よく「健康教室」などの患者様向けのイベントが薬局で開かれていたりしますが、「薬局に来てください」というのは少し一方的だなと最近感じていて、私たちが患者様の生活圏に入っていけば解決できることがもっとあるんじゃないかと考えています。

 常に患者様本位でお話をしてくださっていた草柳さん。コミュニティを作るというよりは、見つけて入っていくという発想も、草柳さんだからこそ新たに提示できる未来への一手なのではないかと感じました。「あなたに幸せになってほしい、と思っていることが伝わる言動をするように心がけています」と話す草柳さんは、人としての魅力も薬剤師として信頼されることに重要であることを教えてくださいました。

取材・構成/中野さやか
新人薬剤師です。IT と SNS とカフェが好きで、インスタグラムのグルメアカウントosaka styleの中の人(フォロワー3万人)をしたり、カフェの一日店長をしたりしています。薬学生からの質問箱にかなり本音で答えています。