新人薬剤師が見つけてきました!
薬剤師のためのイケてる仕事術
Health Hacks for Pharmacist

 今年の春に薬局薬剤師としてデビューした1年目の薬剤師が、同世代の薬剤師の活躍ぶりや、関心を持てそうなトピックを見つけてリポートしていきます。

患者さんが必要な時に、正しい薬の知識をしっかりと届けるために

 薬局に就職した新人薬剤師のみなさんの中には、将来ご自身の薬局を開くことを夢見ている方もいるのではないでしょうか? 今回は、薬局に就職して半年で独立を決心して翌年には浅草でご自身の店舗を開局した小嶋 夕希子(こじま ゆきこ)さんが実践する「明日から真似できる薬剤師のプラスアルファ」をご紹介します。

小嶋夕希子さんは浅草で田原町薬局を経営。独立志望の薬剤師さんをサポートする「独立開局成功塾」の東京校代表講師もしている。

忙しいビジネスパーソンに正しい知識をーオンラインで健康管理

小嶋さん:患者様の中には、ご自身やご家族が服用されているお薬について非常に深い知識をお持ちの方もいますが、中には都市伝説級の知識を本当に信じている方も少なくありません。そんな時、正しい知識を伝えることも私たち薬剤師の大切な仕事です。

 私は仕事上、経営者の知人からLINEでお薬について質問をいただくことがあります。薬学界隈の方が聞くと驚くかもしれませんが、「この薬って我が家では魔法の薬って言われているけど、どこでも塗っていいの?」と見せられた薬がリンデロンVGだったりします。しかもなんとお顔に塗られていたんです!(笑)。ただの抗炎症薬を魔法の薬だと信じて、傷口や皮膚の薄いところに安易に使用していたんです。
「風邪気味だけど病院に行く時間がなくて…家にいくつか残っている抗生剤を全部飲んだら治る?」と見せられた薬がクラビットとジスロマックとフロモックスだったこともあります。そういう「とりあえず」「万能」って、忙しいビジネスパーソンはついつい取り入れてしまいがちなんです。

 しかし、専門家に相談したいけれど病院や薬局に行く時間がなかなか作れない、という忙しい経営者でも、オンラインのチャット形式であれば隙間時間に薬について正しい情報を薬剤師から教えてもらうことが可能になり、またそれを後から見直すことができます。 病院や薬局に出向く時間も、待ち時間も省略して気軽に相談することができ、また状態を伝えることで専門家の判断で受診勧告をしてもらえます。時短になるだけでなく、プライマリケアの一端にもなるわけですね。

 今は知り合いの経営者が数名、個人的にLINEで質問してくる程度ですが、そうやって少しずつ「お薬のことなら薬剤師が答えてくれる」という事例を増やしていけたらと思います。また薬で困った時に「この人に聞いてみよう」と思い出してもらえる関係作りも重要だと考えています。疑問や困ったことが出てきたときに、その人の頭の中の「相談できる人リスト」に入っていなければ、相談してもらうことはできません。

薬剤師ならではの「正しいお薬の知識」が安心をつくる

小嶋さん:20歳の時に母が病気になり大学を中退、闘病と看取りを経験しました。病気になった母は「がんに効く水」「魔法のヨーグルト」といった怪しい商品を購入してしまったんです。もちろん止めようと思いましたが、末期の病状で当時の医療ではこれ以上なす術がない状態の母が満足しているならまあいいか、とその時は思ってしまったんです。

 薬剤師になった今なら「お母さん、それ絶対おかしいよ」と科学的にロジカルに母を説得して安心させてあげられたのにと思います。母は看護師でしたらから、きっと「これ、そんなに良いって言うけど本当に効果あるの?」と心のどこかで不安に思っていたはずなので当時、そういうことを相談できる専門家が近くにいれば……。悩んでいる人に寄り添って正しい知識を伝える存在の重要さを改めて感じた出来事でした。

 ある時、高齢者向けの講演でこのエピソード話をしたら、非常にたくさんの質問をいただきました。「こういうサプリメントを定期購買で勧められるんだけど、本当に効果あるのかしら」「このドリンク、同年代の女性はみんな飲んでいるって勧められるんだけど、何が入っているの?」というような内容です。やはり、医療の知識に乏しく、漠然と健康や将来への不安を持つ高齢者の弱みに付け込んでくる存在が残念ながらいるんですよね。その質問の多さと不安そうな高齢者の表情から、自分が飲む薬に対して正しい情報が知りたいと考えているんだな、と肌で感じました。

こうした経験から、高齢者の皆さまに薬剤師の目線で正しい知識を伝え、私と同じような失敗をするご家族を少しでも減らすことができたらと考えています。

 薬剤師としては3年目ながら、経営者として、独立志望の若き薬剤師のサポートに携わるなど、幅広く活動されている小嶋さんですが、この記事が皆さんの仕事の「プラスアルファ」になれば幸いです。

取材・構成/中野さやか
新人薬剤師です。IT と SNS とカフェが好きで、インスタグラムのグルメアカウントosaka styleの中の人(フォロワー3万人)をしたり、カフェの一日店長をしたりしています。薬学生からの質問箱にかなり本音で答えています。

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